大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和24年(れ)2728号 判決 1950年3月24日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人梅山実明上告趣意第一点について。

原審が被告人の所爲につき賍物寄藏と賍物牙保との二罪の成立を認定し、之を併合罪として処断していることは所論のとおりである。蓋し原判決挙示の証拠に依れば、被告人は始め鄭大権外一名から明日取りに來るから預かって呉れとの依頼により、賍物たるの情を知り乍ら敢てタイヤー一本を預かり、その翌日頃右鄭等は、トラックをもって取りに来たのでこれを同人等に渡したところ、鄭は之をトラックの運転手に売ろうとしたが運転手は買わなかったので、被告人は鄭等から売って呉れと頼まれて之が売却を周旋したというのであるから被告人が鄭等から賍物と知りながら判示タイヤー一本を預ったことにより賍物寄藏罪は成立し、翌日頃之を鄭等に引渡したことにより賍物寄藏罪の状態は終了し、更に鄭等の依頼により右タイヤー一本の売却方を周旋したのであるから、被告人の賍物牙保罪は前期賍物寄藏罪とは全然別個独立に成立したものといわなければならない。即ち本件は始めから売却の周旋を依頼された爲に預かったものではないのであるから、仮令右両所為の日時が近接連続していたとしても、所論のように本件寄藏の所爲は当然牙保の所為に吸収されるものであるとの主張は採用することができない。それ故原判決には何等所論のような違法はなく、論旨は理由がない。

同第二点について。

所論は結局原判決の量刑を不当であると主張するものであるから、刑訴応急措置法第一三條第二項により、上告適法の理由とならないものである。

仍って、刑訴施行法第二條旧刑訴法第四四六條に從い、主文のとおり判決する。

此の判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例